日本でA型肝炎が流行しています

ここ数年、東京都、神奈川県、大阪府などの都市部を中心に日本国内の複数地域よりA型肝炎の発生が報告されました。
東京都内では2018年には約400人を超える感染者が報告されました。
過去の主な感染ルートは、A型肝炎ウイルスに汚染された水や食品が原因でした。例えば、加熱しない魚介類(カキ)や、井戸水、飲食店などにおける集団感染でした。
しかし、今回の流行は、性行為(主に男性間の)による感染が多いのが大きな特徴です。

世界的な流行

2017年6月7日に、FORTHという厚生労働省の検疫情報管理室が海外渡航者むけに開設するwebに、A型肝炎への注意を促すニュースが掲載されました。2016年6月から翌年5月にかけ、ヨーロッパ内の15カ国、またアメリカ大陸(アメリカ合衆国およびチリ)で主に男性と性交渉をする男性(MSM)の間でA型肝炎患者が異常に増加していることがWHO(世界保健機関)により報告され、流行が発生している地域に旅行するMSMに対し、ワクチンを接種するよう注意を喚起しました。

A型肝炎ウイルスの特徴

A型肝炎ウイルスは酸に強く、アルコールにも耐性があります。不活化には十分な加熱(85℃で1分以上)などが必要です。口から体内に入ったウイルスは消化管内で不活化されずに、糞便とともに排出されます。潜伏期間は2~7週間です。下痢、発熱(最初38℃以上の熱が3、4日続く)、けん怠感、吐き気・おう吐、黄胆、肝臓が異常に腫れるなどの症状が出ます。

A型肝炎ウイルスの予防

我が国では1994年に成人用(16歳以上)ワクチンが認可されました。2~4週間間隔で2回接種し、更に6か月を経過した後に追加接種することによって、ほとんどの方は充分な防御抗体を得ることができます。
2003年に実施された調査から推測すると、現在65歳以下の約98%の人にはA型肝炎ウイルス抗体がないと予測されます。

A型肝炎の感染経路

A型肝炎の感染力は強く、肛門周囲をなめるなどの行為だけでなく、肛門に触れた性器や肛門部に触れた指・体に付着した部分をなめる(口にいれる)などを通じても感染します。また、排便後の手洗いが不十分な場合は、食べ物を介して感染することもあります。

【顕性感染/けんせいかんせん】

細菌やウイルスなどに感染したとき、症状があらわれる場合を顕性感染といいます。B型肝炎ウイルス(HBV)では、主要な症状として、発熱や全身倦怠感、関節痛などのインフルエンザに似た症状や黄疸などがあらわれます。逆に、感染しているにもかかわらず症状があらわれない場合を不顕性感染(ふけんせいかんせん)といいます。HBVでは、80~90%が不顕性感染の経過をとるといわれています。一方、A型肝炎ウイルス(HAV)の場合は顕性感染の頻度が高く、不顕性感染は20%程度といわれています。

◉経験者の声

2018年2月末、風邪症状が無いにも関わらず高熱が出ました。主治医のところで受診しましたが、インフルエンザではなかったので解熱剤を処方されました。しかし、解熱剤の効果が効かなくなると熱が上がる日が続き、吐き気も感じるようになりました。

仕方なく他のHIVを治療しているクリニックに相談したところ、すぐにA型肝炎の可能性があると血液検査をし、翌日には大学病院を紹介されて即入院となりました。(50代 男性 東京都)

◉経験者の声

感染し、3週間入院~自宅療養で仕事を休みました。高熱に激しい吐き気もつらかったです。パートナーにも同じ苦しみをさせてしまい、申し訳ないことをしました。まだA型肝炎に感染していない方々には、ぜひワクチン接種をすることをおすすめします。(50代 男性 東京都)

いろいろな性感染症

2018年11月に実施された日本在住ゲイ男性向けのアプリ利用者を対象としたPrEP調査(回答者6,467人)の中間報告によると、約1%が過去6ヶ月以内にA型肝炎、B型肝炎、尖圭コンジローマにかかったことがあると回答し、6ヶ月以上前だと、約11%がB型肝炎に、2.4%がA型肝炎、8.3%が尖圭コンジローマ(HPV)にかかった経験を持っていました。また、梅毒は過去半年に2.1%、6ヶ月以上前だと15.5%が感染した経験を持っていました。

ワクチンで予防できる病気もある

回答者全員のうち、ワクチンの接種経験があるのは4,014人でした。そのうち、A型肝炎は406人、B型肝炎で658人、HPVは64人が接種の経験がありました。

A型、B型肝炎は、ワクチンを接種することで、感染を防ぐことができます。また、海外ではHPVワクチンの接種により、肛門がん・陰茎がんなどの予防に有効であるとの報告もあります。
(回答者6,467人のうち、無回答者は2,233人でした)