ワクチンで予防できる性感染症

A型肝炎の感染経路は、汚染された食物などを摂取することによっておこる感染、ウイルスが付着した手で口に触れることによる感染があります(経口感染)。また、性的接触による感染(糞口感染)もあります。
A型肝炎に感染した場合、症状が現れる前からウイルスは便に排出され、症状が治まった後も長い期間、便から排出されています。周りの人への感染を防ぐために、トイレの後や調理・食事の前等、性行為の前後には石鹸と流水で十分に手を洗いましょう。

A型肝炎

潜伏期間は平均28日(15~50日)です。急な発熱や倦怠感、頭痛、吐き気・おう吐、下痢、腹痛などの症状が出ます。特効薬による治療法はなく、安静や点滴などの対症療法によって自然治癒を待つことになります。A型肝炎は慢性化することはなく、また、患者全体での致死率は約0.3%ですが、60歳以上では死亡リスクが高くなることが報告されています。

B型肝炎

潜伏期間は約3か月間(30~180日)です。全身の倦怠感や発熱、悪心・おう吐、腹痛などの症状が出ます。急性の場合、通常1~2ヶ月ほどで全快に向かいますが、約1%の頻度で劇症化。もしも劇症化してしまうと、死亡に至る場合もあります。

◉ワクチン接種の体験談

SEXをする事があるので信頼をおける人との行為だとしても何が起こるか分からない事や酔った勢いで不特定の方と接触した場合の事を考え、自分を守ろうと2018年12月頃にて接種しました(HIVの感染原因も付き合っていた人からだと考えていますが、それを思い出すと信用出来る事は何も無いという現実を実感します)。それに加え金銭的にも余裕がある時という事も一因としてあります。HIVの感染が発覚してから6年以上経過しており、SEXに関して少しずつ寛容的になっている自身に恐怖はあります。(20代 男性 東京都)

接種可能なワクチン

いずれのワクチンも保険対象外であり、実費負担となりますが、感染予防に極めて効果的です。備蓄状況、値段は施設によってバラツキがあるので、事前にwebや電話で確認しましょう。また、年齢制限がある場合があります。

国内産A型肝炎ワクチン

接種回数:
3回(初回・初回から2~4週間後・第二回から6~24ヶ月後)
抗体持続期間:
約5年間(3回接種後)
費用:
3回で合計20,000円程度(一回につき約6,000~9,000円)

国内産B型肝炎ワクチン

接種回数:
3回(初回・初回から4週間後・第二回から5~6ヶ月後)
抗体持続期間:
約5年間(3回接種後)
費用:
3回で合計20,000円程度(一回につき約5,000~8,000円)

輸入ワクチンについて

A型およびA型肝炎・B型肝炎混合ワクチンには、国内産のほか輸入ワクチンという選択肢もあります。輸入A型肝炎ワクチンの場合、接種回数は2回で抗体持続期間は約15年、輸入A型肝炎・B型肝炎混合ワクチンの場合は接種3回で抗体維持期間は15年~20年程度となります。価格は、いずれも一回約10,000円程度です。

輸入ワクチンは国内未承認であるため、お住まいの地域によっては最寄りの医療機関で取り扱いがない場合があります。また、輸入ワクチン接種のために重篤な健康被害が生じた場合には、補償を受けるまでのハードルが国内ワクチンに比べて非常に高い場合もありえます。

「すでにB型肝炎に感染して、十分な抗体ができている人もいます。抗体の有無は検査にて確認できるので、抗体がついている人はA型肝炎のみを接種することになります。ちなみに、A型とちがって、B型肝炎ワクチンは一般でも接種しても抗体のつかない人もいます。HIV感染があり免疫低下があれば、その割合はさらに高くなることがあります。詳しくは、主治医と相談しましょう」(今村顕史 医師)

HPVワクチン

性行為がある人は、誰でもHPV(ヒトパピローマウィルス)に感染するリスクがあります。男性の多くも女性と同様に感染します。肛門がんの90%と陰茎がんの40%はHPVが原因です。HPV(子宮頸がん)ワクチン(GARDASIL4価)の男性への接種は国内未承認です。海外では、コンジローマや肛門がん、陰茎がんにも有効だといわれています。さらに、HPVの9価ワクチン(GARDASIL9価)が推奨されていますが、国内未承認で、接種対象年齢に制限がある場合があり、値段も高価です。

「効果の持続期間については、免疫状況によっても異なり、十分なデータがありません。国内では男性への接種は未承認のため、副作用時の補償がない状況です。このワクチンは、癌やコンジローマの原因となるウイルスの感染を防ぐために接種されます。したがって、既に性行為で感染しているウイルスを消失させる効果はありません」(今村顕史 医師)

ワクチンはどこで接種できるの?

ワクチンは全国のトラベルクリニックで接種が可能。HIV陽性のかたは、ご自身の免疫機能の状態によってワクチンの適応や投与回数が異なる場合がありますので、主治医と相談しましょう。また、医療機関により、値段や在庫の違いがあります。
また、最寄りの医療機関で輸入ワクチンの取り扱いがない場合があります。

最寄りのトラベルクリニックへ

全国のトラベルクリニックでワクチンを接種することができます。
最寄りの診療所や診療内容の詳細については、

以上をご参照ください。
ワクチンは必ず規定の回数を接種しましょう。そうしない場合、抗体が十分に作られない場合があります。

トラベルクリニックでワクチン接種の希望理由をどう伝えれば?

いざワクチンを接種したいとトラベルクリニックを訪れたとしても、医師にその理由をどう伝えたらよいか悩んでしまう方がいるかもしれません。

診察の時点で理由をたずねられることがありますが、ワクチン接種の目的を「性感染症予防のため」と伝えにくい場合、海外への渡航を理由として申告(たとえば「数ヶ月以内に東南アジアへ渡航する予定です」など)したとしても、医師から証明などを求められることはありません。

ワクチンの接種と健康被害に対する補償

国産ワクチンは、国内で使用されている多くの医薬品同様、臨床試験を行い、有効性や安全性が評価された上で、日本政府の承認を得たものです。国内未承認の輸入ワクチン等については、そうしたプロセスを経ていないため、副作用発生時の「医薬品副作用被害救済制度」(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)の対象になりません。接種を依頼する医師とよくご相談ください。